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時代設定は、「新たなる旅立ち」と「永遠に」の間。

タイトル:「真田の苦悩」

 真田志郎は苦悩していた。
 友人を何と呼ぶかで。
 それというのも、先日、地球防衛軍本部へ所用で行った際、カフェテリアの入り口で古代守の姿を見かけたので、
「よぉ!古代!」
 と、何の気なしに声をかけたら、なんと古代守の背後に弟の古代進がいて、
「ん?」
「はい?」
 と、二人同時に振り向かれてしまったのだ。
 兄の守は、
「よぉ!真田」
 と、まるで気にも留めてなかったが、弟の進の方は、”あれ?俺じゃなくて兄さんの方だったのかな?”と、真田の顔色を窺うように見ていて、真田は罰の悪い思いをし、仕方なく”よ!”と片手を上げて場を取り繕った。

 古代兄弟二人を前にして真田は何と呼んだら良いのか分からない。
 兄の守とは、宇宙戦士訓練学校以来の友人で、その頃から「古代」と呼んでいたし、弟の進とは、イスカンダルへの航海以来の仲間で、実の弟のように親しみを込めて「古代」と呼んでいた。今までは、守はスターシャと共にイスカンダルにいたから兄弟と揃って会うこともなかったが、これからは度々会うことになるのだ。古代兄弟も自分も地球防衛軍の一員として働いているのだから、今回のように不意に会うことが今後も考えられる。

 さて、何と呼ぶか。
 もともとは兄の方と友人だったのだから、兄は「古代」で、弟は「進君」ではどうだろうか。
 …今更、「君」付けもあるまい。
 では、どうするか。
 兄は「古代」で、弟は「艦長代理」ではどうだろう。
 …何か、弟の方が偉く見えないか?
 さて、困った。
 兄は「古代」で、弟は「古代弟」ではどうだろう。
 …いや、別に弟という名前じゃないし。
 困ったなぁ。「古代」は「古代」なのになぁ…と思った時、ふと気がついた。そうか。兄の呼び名を変えればいいんだ。

 それから数日後、再び地球防衛軍本部を訪れた真田は、通路で弟の進を見つけた。
「よぉ!古代!」
「はい?」
「ん?」
 今度は、進の陰に兄の守がいた。
 真田は心持ち怯んだが、先日の二の舞は踏むまいと、ぎこちなく兄の守に向かって呼んだ。
「よぉ!守」
 呼ばれた守は、初めて真田からそう呼ばれ、面食らったが、すぐにニっと笑った。
「よぉ!真田」
 真田は照れたように笑い、進も少し照れたように笑った。

 そして、これは、三人で談笑した束の間の平和なひとときだった。


単に、真田さんに「守」と呼ばせたかっただけのことです(笑)。
肩こりと腰痛と膝痛で通っている接骨院で治療を受けている最中に思いついたネタ。
治療中は、診療ベッドに横になっているだけなので、こんなネタをたまに思いついてニヤニヤしていたりする。(危ない奴)
「新たなる〜」の後、せっかく守兄さんが地球に帰って来たんだから、こんなひとときもあっていいよね。(2007.04.09 久保田r)
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